レスポンスを比べてみる(携帯4キャリア+ウィルコム篇)改訂版

さて、トップページでも書いたことがありますが、モバイル通信でネックになるのはもちろんスループットですが、スループットがある程度の所をクリアしていれば、そこから先はむしろ「レスポンス」の方が重要になります(ラウンドトリップタイム、RTT等と言われることもあります)。と言うことで、今回は、携帯各社のパケット通信のレスポンスを計ってみましょう、と言う会。

ここで言い訳。いやさ、ホントはスループットも比べたいんですけどね、定額のデータプランがあったり無かったりするし、定額のデータプランだと速度を制限されたりするキャリアもあるじゃないですか。だから、各キャリアのパケット通信の基本スペックというのは正確には測れない可能性があります。ついでに言うと、えーと、定額データプランって高いんで、正直、全キャリアそろえるのは無理っす(苦笑)。でも、レスポンスの測定だけならせいぜい100パケット程度で済んじゃいますから、お財布へのダメージはせいぜい数十円。ってことで、今回はレスポンスの測定だけとさせていただきました。

  1. 実験の前提

    実験の前提として、次のような条件で行うこととしました。

    実験場所:都心(山手線内)、屋内、屋外への見通しあり。電波表示は各社最高レベル。
    実験時間:午前9時
    接続方法:
    各社共通:キャリア各社の提供するプロバイダへ、パケット接続。
    ドコモ・ソフトバンク:W-CDMA対応機、おそらくHSDPAエリア内。
    au:cdma2000 1x対応機、おそらくEV-DOエリア内。
    ウィルコム:PHS W-OAM対応機、おそらくW-OAM対応エリア内。
    レスポンス測定先:googleのサーバ、IPアドレスで指定
    レスポンス測定方法:ping -n 5 66.249.89.104で5回測定、パケットサイズはデフォルトの32byte。

    まず実験場所ですが、郊外では各社の高速サービスの対応状況が違う可能性もあると考え、都心で行うことにしました。ただ、都心では混雑している可能性もあるため、混雑している可能性が非常に低い午前9時という時間をあえて選ぶことにします(あさっぱらからなにやってんだ;笑)。

    各社とも、キャリアが提供しているプロバイダを使うことにします。いや、別途プロバイダを契約するのがめんどくさいので。っていうか、全キャリアのパケット対応のプロバイダって、多分ないですよね。特にソフトバンクは、ソフトバンクのアクセスインターネットとODNしか対応してないので、結果として公平にするにはキャリア提供のプロバイダ、と言う条件にせざるを得ませんでした。

    どうでも良いですが、ソフトバンクのアクセスインターネット、すごく不親切ですね。HPも購入時についてきたサービスガイド(冊子)も、全く情報不足でした。googleで検索して個人サイトで設定(と言ってもアクセスポイントとID/PASSだけですが)をようやく発見して接続できたんですが・・・ちょっとひどすぎ。

    と言うことで、上の条件で実験を行うことにします。

  2. 実験結果

    では早速実験結果です。実験自体は、端末をUSBケーブルでPCに接続し、ダイヤルアップ接続を完了させてからpingを5発打つ、と言うだけ。まずは各社の生データを見ていただきます。

    ドコモ
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=123ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=121ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=129ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=127ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=125ms TTL=243


    au
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=140ms TTL=242
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=179ms TTL=242
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=174ms TTL=242
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=174ms TTL=242
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=179ms TTL=242


    ソフトバンク
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=231ms TTL=246
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=292ms TTL=246
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=229ms TTL=246
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=227ms TTL=246
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=226ms TTL=246

    イーモバイル
    Reply from 66.249.89.99: bytes=32 time=102ms TTL=244
    Reply from 66.249.89.99: bytes=32 time=185ms TTL=244
    Reply from 66.249.89.99: bytes=32 time=94ms TTL=244
    Reply from 66.249.89.99: bytes=32 time=93ms TTL=244
    Reply from 66.249.89.99: bytes=32 time=92ms TTL=244


    ウィルコム
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=71ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=104ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=63ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=65ms TTL=243
    Reply from 66.249.89.104: bytes=32 time=65ms TTL=243


    何となく、ウィルコムが速くて、イーモバイル、ドコモ、auが続き、ソフトバンクが一番遅い、と言う感じですね。これだけではわかりにくいので、平均値をグラフにしてみます。

    DoCoMo125 ms
    au169 ms
    Softbank241 ms
    eMobile113 ms
    WILLCOM74 ms

    このように、ウィルコムが最もレスポンスが短く平均74ms、ドコモ、イーモバイルはほぼ同程度の平均125ms、113ms、auがやや遅れて平均169msで、ソフトバンクは平均241msで5位となりました。

  3. 考察

    そもそも、パケット通信の最大速度だけを見れば、ドコモ、ソフトバンク、イーモバイルが7.2Mbps、auが3.1Mbps、ウィルコムが800kbpsで、速度だけでレスポンスが決まるのだとすれば、ドコモ=ソフトバンク=イーモバイル>au>ウィルコム、と言う順番になるはずです。しかし結果はウィルコム>ドコモ=イーモバイル>au>ソフトバンク、と言う形になりました。

    実はこのレスポンスの値は、単に無線性能だけでなく、ネットワーク構成や基地局性能など、様々な要因が絡んでいます。また、今回はデフォルトの32byteと言う小さなサイズのパケットを使いましたが、このくらいの大きさのパケットですと、大体どの方式でも無線のフレーム一つか二つくらいの中に収まってしまいます。つまり、究極的にはフレームタイミングの長さが効いてきます。

    まず簡単なところで、フレームタイミング。W-CDMAのHSDPAでは、フレーム長は2ms、cdma2000のEV-DOでは26.67ms、PHSは5msです。まずここで、ドコモの125msとauの169msの差がある程度説明できます。二者の差は、約40ms。HSDPAとEV-DOの差は約20ms、往復で40ms。つまり、ドコモとauは、フレームタイミングの差でレスポンスが決まっている、と言う言い方もできます。

    次に、同じ方式であるドコモ&イーモバイルとソフトバンクでどうしてこれだけ差があるのか、と言う点ですが、こればかりは推測に過ぎませんが、基地局性能とネットワークの品質辺りが怪しいと思っています。ソフトバンクは一時期勢いで基地局を増やしましたたが、聞いたところでは、中国での3G免許遅れの影響でだぶついている少々型の古い粗悪品の基地局を大量に買い付けていたと言われています。この辺の基地局があまり性能が良くなく、パケットの処理に時間がかかってしまっている、と言う原因が考えられます。また、ネットワークにしてもドコモに比べれば少々見劣りするバックボーンで、この辺もレスポンスの悪化の原因と考えることができます。

    また、イーモバイルが、ドコモと同等とはいえ当初の成績(約65ms)から大きく後退していることについて。これは、音声の開始が大きく影響しています。パケットのみをやるのとパケットと音声を同じネットワークで処理するのでは格段に処理の複雑さが変わります。結局、基地局や制御局での処理遅延が音声処理のために延びたと考えられます。と考えると、5千万以上の音声ユーザを抱えるドコモが、10万人にも満たないと推測できる音声ユーザ数しか持たないイーモバイルに匹敵するレスポンスを見せていることは驚異的です。安物の基地局を買ってきただけのキャリアと自社で技術を持ちほぼフルカスタマイズの基地局を開発できるキャリアの違いと言えそうです。 最後に、圧倒的な高性能を見せたウィルコムについて。正直、この実験をやってみるまで、ウィルコムがここまで良い成績を出すとは思っていませんでした。以前は、最小サイズのパケットでも300msとかかかるのが普通だったからです。

    一つは、基地局性能の大幅アップがあるかも知れません。パケットを始めた頃の基地局は元々パケットを扱うことを前提としていなかったので処理に時間がかかっていたのでしょうが、最新の基地局は最初からパケット前提で設計されていますから、処理能力が大幅に上がっていると考えられます。また、都心では今ではほぼ全ての基地局が最新の基地局に取り替えられているのかも知れません。

    そしてもう一つ、他の事業者は基地局からコアネットワークまでは、いわゆる「交換網」という古いタイプのネットワークで結ばれています。それに対して、ウィルコムは都市部ではほとんどのエリアでITXを導入して、バックボーンをIP化しています。交換網では、交換網信号とIP信号の変換が必要となり、どうしてもそこで遅延が発生してしまいますが、ウィルコムではその分の遅延が無いのかも知れません。そのため、スペック的には劣るはずのPHSと言う方式でも非常に良い成績が出せたのではないかと考えられます。

    また、XGPでも商用網で30msをたたき出すと言うことを考えると、とにかくバックボーン(IP網)の徹底的なチューニングが考えられます。同記事でも考察しましたが、XGPはPHSと同じ5msフレームなので最低10msは無線で食っています。しかもインターネット上へのpingなので、インターネット接続遅延があります。と言うことは、コアのIP網と交換網の遅延はほとんどないくらいです。XGPやPHSという方式では速度で勝負し続けるのは厳しいと見て徹底的にレスポンスを追い求めた、と言うことが伺われるわけです。XGPとPHSは同じコアを共有していますので、結果としてどちらもすさまじいまでのRTTの短縮がなされた、と言うわけです。

    と言う結果になりましたが、やはりキャリアがデータ通信に力を入れているかどうか、と言うのが結構如実に出た感じですね。ウィルコムはデータくらいしか稼げるところがありませんし、イーモバイルは事実上データ専業キャリア。ドコモ・auも、法人向けでのデータ回線大量受注の話をよく聞きます。ソフトバンクだけは昔からあまりデータを重視しない、個人音声向けが強いキャリアだったので、やはりこの辺は少々力のいれ具合が違うのかも知れません。

    と言うことで、レスポンスの各社比較と考察でした。

  4. 注意

    今回の実験結果は、特定の日時、特定の場所における実験値です。別の場所や将来的にも同じ値となることを保証するものではありません。

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