携帯の世代ってなんだ?


◇ようやく軌道に乗り始めた各キャリアの次世代携帯電話。しかしまぁ、こうやって見ていると、どうも「次世代」という言葉ばかりが一人歩きしているようにも見えてきたりする今日この頃。ということで、今回のお話は、この携帯の「世代」という言葉について。例によって私自身も調べながらおっかなびっくり進めていきますので、間違い・矛盾はどうぞご勘弁を(予防線)。

◇この「世代」という言葉が使われるようになったのは、いつの頃だったか、これはもうほとんど資料もなく、いつの間にかというのが実際のところかもしれませんが、私が思うに「第3世代」の携帯電話というものが世の中に現れたときに使い始められたのではないかな~、と思います。第3世代というのは、要はドコモのFOMAとかauのcdma2000だったりするわけですが、ここで言っているのはこういうものが世の中に出てきた頃、ということではありません。そうではなくて、それまでの携帯電話(PDCなど)とは一線を画する能力を持った携帯電話と言うものを考えてみよう、というところから、という意味です。つまり、最初アナログ携帯電話があり、次に、それとは全く違うデジタル携帯電話が出てきた、しかし、これ以上のものを作ってみようと考えたときに、おそらく、じゃぁ最初のアナログは第1世代ね、で、次のデジタルへの変革が第2世代になったってことにして、次のは高ビットレートのデータ通信と国際ローミングを売りにした第3世代ってことにしましょう、っていう流れだったと思うわけです。

◇なぜこう思うかというと、今回の第2世代から第3世代への移行ってのがですね、アナログからデジタルに変わったときほどの大変革には見えないからなんですよ。だから、アナログ=旧世代、それ以外=新生代、という区切りだけでも十分に思えるんです。それでも、作っている側からすれば、何か新しいものを作っているってことを知ってもらいたい、じゃぁ、これを第2世代に続く第3世代への世代シフトだよ、と言うことにしちゃったんだと思うんです。そして、こういうことを言わせてもらうには実は根拠があります。

◇それがですね、2.5世代携帯という言葉の存在です。auのcdmaOneは、一般的に第2.5世代携帯電話と認識されています。それは、PDCよりはビットレートも高いし、国際共通性も高い、でも第3世代というには足りないなぁ、ということからです。そう、第2世代から第3世代へは、実は連続的にシフトすることができるんです。第3世代と呼ばせるためのポイントは、先ほど上げた、ビットレートと国際共通性。このどちらも、実は連続的に変化できるんです。一方、PDCは有無を言わさずビットレートは限られていますし、世界から完全無視の独自規格。第2世代でしかないんですね。

◇そして、もちろん、1.5世代と呼ばれる規格もこの世には存在しません。これが、アナログからデジタルへ、という本当の変革と、第2世代以降の連続的な変化との大きな違いではないかと思うわけです。だから、携帯電話の世代と言った場合、大きく分ければ第1世代とそれ以外、と分けるのが実はもっとも現実に即していると思われるわけで、携帯電話の「世代」という言葉、私から言わせてもらえれば、単に新しいものを売るためだけに作り出された「宣伝文句」としか思えない訳です。

◇それでは、その世代の定義、どうやって決められているんでしょうか?。最も簡単なのは第1世代ですね。デジタル移行前の、アナログ携帯電話はすべて第1世代とまとめることができます。なぜこんなにあっさりまとめられるか、と言うと、答は簡単、先ほども言ったように、第1世代が出そろい、第2世代への交替も進んだ頃になって、後付けで「第1世代」と決めたからです。だから、本当は第1世代携帯電話なんて存在しないわけで、あとから勝手にひとまとめにくくっただけなんですよね。

◇そして、第2世代。この定義から難しくなってきます。実際にちゃんとした第2世代の定義というのを見たことがないんですよね。で、ここで私が勝手に決めちゃいましょう。第2世代携帯とは、第1世代ではなく第3世代以降でもないデジタル携帯電話である、と。にゃはは、かなりわけのわからん定義になってしまいました。が、実際、これで正しいのではないでしょうか。第2世代ほど世界中に規格が乱立した世代はないわけですから。こんないい加減な定義にでもすがるしかないと思うわけです。

◇そうすると、じゃぁ第3世代とは?となるわけですが、ここで第2世代以前でもなく第4世代以降でもない携帯電話、なんて言う小ネタをやっちゃってもいいんですが、まぁ、とっとと話を進めましょうね。なにより、先ほども言ったように、「革新的な携帯電話を作りたい、じゃぁ、過去のを第1第2世代にして、これから定めるのを第3世代にしよう」というのが、世代って言う言葉の始まり、ですから、第3世代については実は、定義の方が先に決まっていたんです。世に言う「IMT-2000」ってやつですね。これは、2000年をめどに、世界中の携帯電話がこの基準に沿った新しい規格を採用することにしよう、という、国際的な取り決めのようなものです。その目標定義はというと、1.高速通信:静止時2Mbps、移動時64~384kbpsのビットレート、2.国際ローミング:同規格はもとより、規格の壁を越えて国際ローミングできる仕組みを備える、3.通話品質:固定電話並の音質を備える、4.周波数利用効率:従来より格段に高い利用効率を実現する、というものです。つまり、これらをすべて実現できたら第3世代という肩書きをつけてもいいよ、という意味合いのものですが、これ、部分的に実現できたりある程度までならできるよ、という定義のものが多いと思いませんか?。第3世代がまず定義ありきで無理矢理「次世代」という名前をつけることが目的で、実際は現在の技術の延長線上でしかないということの意味であるわけです。

◇さらに、第4、第5世代となると、もはやその定義は混沌としているわけで、最近では、「帯域が一桁上がったら1世代上がるんでしょ?」なんて言う間抜けな見解にも「NO!」と自信を持っていえなくなってしまっています(苦笑)。つまり、第3世代以降は、はっきり言って、世代数なんてあとからとってつけたもの、と思っていて間違いはないと思います。そのうち、新しい方式が一つできる度に世代が上がっていく、なんて言う、前述の見解より間抜けな現実が見られるかもしれません。

◇そんな中で、現状世界で動いているいろんな携帯電話規格がどの世代に入るのか、これもよくよく考えてみれば怪しいものなんですよ。それは、第3世代の定義が曖昧すぎるからなんですが。たとえば、GSM。ビットレートも低いし音質も周波数利用効率も並、だけど、国際ローミングという面で見ると、極めて広く世界中で使えるようになっています。この点に関しては十分に第3世代と言ってもいいほどの能力を持っているわけです。一方、ドコモのW-CDMA。確かにビットレートも高いし音質もそこそこ、けれども、肝心の国際規格に準拠していないため、日本でしか使えないという体たらくで、これを第3世代と呼べるなら、GSMだって第3世代と呼んであげてもいいんじゃないの?とも思えてしまうような代物だったりするわけです。

◇で、せっかくこんなサイトでこんな話をするんですから、じゃぁPHSって一体何世代に当たるのか、と考えてみましょう。そもそも、PHSは携帯電話ではないので何世代と考えるのもおかしな話なんですが、そうは言ってもPHSの親戚に当たる欧州のDECTが第3世代携帯電話として認められるなど、この際各国の法的分類はどうでもいいわけで、ここで思い切って分けてみます。で、そのPHS、一応デジタルではありますので、第2世代以上には間違いがなさそうです。一方、先ほど挙げた第3世代の条件を考えてみると、1、2はちょっと厳しいです。しかし、3は余裕でクリア、4に関しても、PHSの周波数利用効率はすでに第二世代携帯電話各方式を一桁以上上回っていますから(WCDMAやcdma2000を越えるほど)、この二点ではすでに第3世代の領域に踏み込んでいます。ということで、無理矢理世代数をつけようとするなら、PHSの世代数は2~2.5というところになるのでしょう。世の中の大体の認識としても、PHSは第2世代だと言われつつ、音質・ビットレート・周波数利用効率では1ランク上、というものが一般的だろうと思われます(ここで言う一般的、とは技術屋レベルでのお話です)。

◇そして、もう一つ、いわゆる「高度化PHS」というものがあります。現在すでに規格として制定され、数年以内の実用化が期待されています。これはどう言ったものか、というと、現在のPHS技術を基盤に、いろいろとインチキをやって、ビットレートを大きく上げ、エリア端での品質の安定性も確保、エリア中心部でも周波数利用効率の大幅な向上を狙ったもので、一般的な3G(WCDMAやcdma2000)を遥かに越える周波数利用効率が得られるようになります。ビットレートも1Mbps、PHS基地局の技術的先駆者三洋の発表によると独自技術で~2Mbpsの帯域を確保できます。もちろん音声通話レートは従来通り、また、旧PHSとの下位互換も備えることができますから、アジアを中心に普及中のPHSとのローミングも可能です。高度化PHSはほぼ第3世代と呼んで差し支えない能力を手に入れる予定となっているわけです。

◇しかし、ヨーロッパのPHSの親戚DECTはIMT-2000に認められましたが、高度化PHSはIMT-2000に認められそうもないのが現状です。特に技術的に難点があるとかではなく、おそらくは、単純にこれまで「携帯電話システム」として認知されてこなかったというだけの理由からでしょう。日本で開発され日本で初めて公衆サービスを始めたPHSは、日本の法制度上は「簡易型携帯電話」または「PHS」であり、はっきりと「携帯電話」とは区別されています。このことが高度化PHSが第3世代携帯電話として認められることを妨げるであろうことは想像に難くありません。そう、ここでもやはり「勝手な定義付け」がPHSの脱皮を妨げているわけです。

◇とはいえ、そもそも携帯電話の世代なんてもの自体が、勝手な定義付けに他ならず、極論すれば単なる宣伝文句のための方便にすぎないわけです。こうやって日本の各次世代を改めて見回してみると、何とも滑稽に見えてきますね。キャリアはなにも示さずに次世代次世代と口角泡をとばし、なんの中身もない第3世代という言葉に振り回される消費者。

◇ということで、このコラムで私が言いたかったことは、すなわち、ただ勝手な定義付けで決められた世代なんて言う言葉にはなんの意味もなく、それぞれのキャリア・方式のそれぞれの特徴に覆い被さってしまうだけの隠惑の霧でしかないということです。誰が言い出したかは知りませんが、半端なサービスを「次世代」と偽って売り歩く某キャリアにとっては非常に都合のよい言葉ではあるみたいですがね。



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