Dポのアンテナについて考える


◇私もこのところすっかり目が肥えて、街を歩いていてもDDIポケットの基地局を簡単に見つけることができるようになりました。というのも、Dポの基地局のアンテナ、ほかのPHSと比べてもかなり特徴的で見つけやすいからです。というわけで、今回はDポアンテナについて考えてみましょう。

◇Dポの基地局のアンテナ、と一言に言っても、実はいろんなタイプがあります。もっともよく見られる4エレメントのタイプだけをとっても、ちょっと長めだったり、短めだったり、間隔が広かったりと、バリエーションがあるようです。また、ちょっと田舎の駅のホームなどでは、市街地に置いてあるものと同じ基地局本体に、小さなアンテナ(20cmくらい)4本がくっついたようなものを見ることができます。さらには、ドコモ・アステルと同じように電柱にぶら下がった小型タイプもあります。これだけ種類があると、さぞやドコモ・アステルの基地局と見分けるのが大変だろう、と思われるのですが、実は意外と簡単に見分けられるポイントがあります。

◇これは絶対と言うわけでもありませんし、ドコモ・アステルもこうなっている場合がある、ということを断った上で言っちゃいますが、Dポの基地局アンテナ、白いんです。いや、いろいろ含みを持たせているのではなく、そのものズバリ、外見が白いと言うこと。最近は特にドコモが郊外でDポと似た形の4エレメントアンテナを立てていますが、どれもエレメントが黒で、Dポとは簡単に見分けられます。白いエレメントのPHS基地局を見つけたときは8~9割はDポの基地局だったりします。

◇しかも、これは大型の高出力タイプだけにいえるのではなく、電柱ぶら下がりタイプにも同様のことがいえます。ドコモ・アステルはどちらも黒いエレメントを使っているのに対して、Dポのぶら下がり型だけはなぜか白いエレメントなのです。これはいったいどういうことなのか、ということなんですけど、本当にどういうことなんでしょう?まさか最初から基地局探しを趣味にするような人が出てくることを想定していたのでしょうか?(んなあほな)

◇で、この白いアンテナ、もう一つ不可解な点があります。その前に、アンテナについて。アンテナというのは、もちろん、電波を放射・受感するものです。ということは、電波を可能な限り効率的に放射できる方が有利になります。一方、電波というのはもちろん電磁波です。ひょっとするとみなさんも「黒体」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、この黒体というものは、電磁波を100%の効率で放射・吸収する理想的な物体のことです。で、読んで字のごとし、一般的に色が黒いほど黒体にちかい性質を持ちます。逆に言えば、白い色は電磁波の放射・吸収には向かないということです。・・・おや、Dポのアンテナは白いですね。つまり、白いエレメントはアンテナとしてはどちらかといえば不利となるはずなのです。

◇もちろん、この議論は一つ見落としている点があります。それは、可視光線の周波数帯で白いものが、PHS電波の周波数帯でも白い、と仮定していることです。おそらく、Dポのアンテナの白は、PHSの周波数帯ではほぼ透明なのでしょう。とはいえ、一般的に言っても、全周波数帯で黒いものの方が、一部の周波数で黒・一部では白、というものよりは作り易かろうと思われます。なぜ白にこだわったのかはわかりませんが、やっぱりトレードマーク的な発想もあったのかなぁと思ってしまいます。

◇しかし、4エレメントのDポ基地局アンテナは、もう一つ、特徴があります。それは、アンテナの支柱(主柱から伸びた腕)がかなりしっかりと作ってあり、4本のエレメントがかなりきれいに垂直に立っている、ということです。似た形のドコモPHSの基地局アンテナを見てもらえればわかりますが、なんだかちょっと頼りなくふにゃりと傾いていたりします。支柱に斜交いらしきものが入ったアンテナはほとんど見ません。これは、送受信性能を非常に重視していたDポと、その性能にはあまり頓着せずに、むしろ数でエリアをカバーしようとしていたドコモ(旧パーソナル)の思想的違いのためではないかと思われます。もちろん、ここではどちらが優れているとは言えません。むしろ、ドコモのやり方の方が当初のPHSのコンセプトに合致するものだからです。しかし、Dポは空間インフラが弱かったために数で勝負ができず、代わりに基地局一つ一つを極限まで高性能にすることで競争を図ろうとしていたのではないかと思われます。それが、しっかりと固定され、非常に高度で精密な送受信制御にも耐えうるように考慮されたアンテナ(及び支柱)として、見られているのではないでしょうか。

◇さて、Dポのアンテナ、といって、基地局アンテナだけを思い浮かべるわけにはいきません。そう、端末にもちゃんとアンテナは付いています。これに関しては、キャリアごとにそれほど差はないように感じますが、実は、Dポの端末は(昔は)結構特徴的なアンテナを持っていました。

◇それは、ホイップアンテナ。え、なーんだ、そんなことか、と思った方も多いかもしれませんが、実は、端末のホイップアンテナにこだわったのはDポ陣営の端末メーカばかりなんですよ、当初は。最初の頃、PHSはもちろん親機並の小さなエリアだけでサービスを行うことになっていましたから、端末にそれほど立派なアンテナが必要だとは思われていませんでした。そういうわけで、PHS黎明期の端末は、本体からちょこっと飛び出したヘリカルアンテナだけだったりしたものです。特に、当時はだらしなく伸びるアンテナというのはPHSのスタイリッシュなイメージに合わないということで、あらゆるPHSメーカは「のびないアンテナ」を懸命に開発していたようです。

◇そんな中にあって、独自路線を突っ走るメーカがありました。Dポの事実上の親会社でもある京セラです。京セラのPHS端末は、PHSサービス開始から今日に至るまで、ほぼ例外なくホイップアンテナを搭載していました。また、それに習うかのように、Dポ系端末はホイップアンテナを搭載したものが多かったように記憶しています。なぜでしょうか。

◇それは、Dポが当初から大セル方式でエリア展開をしていたからです。基地局からの距離が比較的大きくなってしまうことから、端末側でもできるだけ高感度のアンテナを採用して、基地局からの距離の壁を埋めようとしていたのです。特に、下り出力をいくら大きくしても上り出力は変えられませんから、端末からの送信位置について、1.地上高を稼ぐ、2.誘電体(頭)からなるべく離す、ということをやって利得を稼ぐ必要があったのでしょう。ですから、古いDポ端末の特徴の一つとして「ホイップアンテナがある」を挙げてしまってもいいくらいDポは(他社に比して)ホイップアンテナが多かった気がします。

◇ということで、今回は、基地局・端末の両面について、Dポのアンテナを考察してみました。そして、どちらの面からも言えることですが、Dポはとにかく無線性能に非常に重みを置いています。それはもちろん、基地局設置のための空間インフラ不足というディスアドバンテージを工夫でカバーしようという、Dポの涙ぐましい努力の結果でもあるわけです。このことは、基地局間の同期をとってより効率的なエリア設計ができるようにされているあたりにも反映されているのです。そして、そうした中で必然的に生み出された特殊基地局、通称「ボスキャラ」と呼ばれる同期中心用基地局は、今も各地でアンテナ・基地局廃人たちに特にあがめられ、彼らの目を楽しませていることでしょう。




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