「エリア」とはなんぞや?~決めるのは誰?(後編)


前回からの続きですが、とりあえず前回のおさらい。一見どこまでも届くと思われる電波ですが、あまりに弱るとエラーが増えるため、そのエラーをある一定率以下に抑えるように、電力が一定以下になったらエリア外としなさい、と言うように規格に決められている、と言うお話しでした。

◇で、通信キャリアはこの規格を元にエリア構築をしていく訳ですが、これがまたくせ者。というのも、サービスをしていく場所が完全な平地なら、問題はないんですが、どんな場所にも多かれ少なかれ障害物が出てきます。大きなものでは山、小さいところでは民家などが障害物になり得ます。さらに、周波数同士の衝突も問題です。cdma方式はともかく、同じ場所に同じ周波数の電波が届いていると干渉を起こして通信ができなくなります。cdma方式でも、同じ周波数ばかりだと通信チャンネルが極端に少なくなってしまいます。というわけで、エリア展開にはなかなか各社神経を使っているようです。

◇そうやって、ようやくできてくるのがエリアマップというわけですが、さてこのエリアマップ、どこまで信用できるものなのでしょうか?このエリアマップ、もちろんキャリアが作っているものです。ですから、キャリアそれぞれに思惑が見え隠れするものでもあります。

◇たとえば、ドコモ。ここはエリアが広いことが一番の自慢です。ということを反映してか、エリアマップの縮尺もかなり広いです。細かいところがわからない部分もありますが、まあ、エリアだけが利点のドコモですから、今時エリアの穴がエリア内にあると言うこともほとんどなくなっているんでしょうね。一方、ドコモの地下鉄エリアマップはかなりごちゃごちゃして見にくいです。でもよーく見てみると、実は地下エリアは全然ありません。エリアの地下鉄駅だけを書くと少なさがばれてしまうのでわざとエリアではない駅も事細かに書いているんでしょう。その点、DDIポケットは地下鉄駅エリアはかなりさっぱり、というか、地図としての情報量は0です。その隣に「地下鉄100%」と書いてあり、はっきり言ってこの一言だけで十分です。一方、地上、つまり普通の意味でのエリアマップですが、去年あたりまではかなり細かい地図だったのが、突然デザインが変わって、かなり広い範囲の地図しかなくなりました。去年後半といえば、DDIポケットがアダプティブアレイアンテナを使ってエリアを急拡大した時期。つまりエリア拡大にあわせてエリアマップの精度(?)がドコモ寄りになってきたと言うわけですね。なーる。

◇そう、いまちょこっと出てきましたが、このエリア、アダプティブアレイのような特殊なアンテナを使った場合、かなりエリアとして考えるのが難しくなります。なぜなら、アダプティブアレイ、状況によって指向性を変化させ、特定方向への出力・感度を2~3倍に上げることができるからです。つまり、従来のアンテナに比べて2~3倍にエリアマップ上で表記するのか、それとも従来アンテナ通りに表記するのか、が、問題になるわけで。

◇で、実際問題、どうやってマップを作るのか。一番簡単な方法は、各地に出向いていって電界強度測定をして、それをマッピングしていくという方法。ただ、この方法は莫大な人手と時間が必要になります。結局は、地形と理論から、ある程度「理論値」っぽく作っていくというのが実際のところになるわけですよね。で、ここで問題があって、特に携帯、これは結構強力な電波でかなり広い範囲をカバーします。ということは、すべての点で実測するのもかなり非現実的で、理論予想がかなりの部分を占めてきますが、基地局から離れるほど予期しない反射や回折の影響が大きくなってきます。ですから、携帯のエリアの端はかなり信用できなくなります。一方で、PHSは基地局のカバーエリアが比較的狭いですから、かなりエリアマップ通りの通信環境が得られます。特にアステルはほとんどが低出力局なので、エリアマップ上での圏外に一歩踏み出すと本当に圏外、なんてことも多いのではないでしょうか。また、携帯・PHSとも、一つの基地局のカバーエリアは田舎>都会となっていますので、都市部のエリアマップの方が信頼性が高くなります。もちろんキャリアの信用もありますから、信頼性の低い場所では最低限のエリアを示すことが多いようです。現に私の実家もDDIポケットのエリアマップ上では圏外に2km近くもはみ出していますが圏内です。

◇さて、エリアを考える上で、もう一つ避けて通れない問題があります。それは、基地局からの電波と端末からの電波の不均衡という問題です。だって、おかしいと思いませんか?たとえばDDIポケットでは、基地局が500mW、端末が10mWです。普通に考えれば、基地局から離れると基地局の電波は届くけど端末の電波は届かない、という状況が絶対出てくるはずです。こんなにあほみたいに基地局の出力を上げないで、基地局も10mWにしちゃえば?と思うのですが。この答えは、「アンテナ」です。基地局にはでかいアンテナがありますよね。あのアンテナが、小さな端末の電波をがっちりとキャッチするわけです。一方、端末には実に小さなアンテナしかついていません。ですので、代わりに基地局から強力な電波を出してやる必要があるわけです。

◇上の議論では、基地局からの電波が届くことばかりを考えていましたが、実は、エリア、といった場合、端末からの電波が基地局に届く範囲である必要もあるわけですね。ですから、基地局でのアンテナ性能や受信方式(ダイバーシチ)によってもエリアが大きく変わってきます。例を挙げると、ドコモPHSとDDIポケットPHSの高出力アンテナ。どちらも500mWで、アンテナ4本によるダイバーシチを構成していますが、そのエリアは実はかなり違います。それはひとえに、ダイバーシチ受信方式の違いです。スペックと見た目だけDポの真似をしたドコモPHSの高出力型は、実はDポにくらべてかなりカバーエリアが狭いようです。これについては某有名B級テクノサイトでもレビューがあります。興味のある方は是非探してみてください。というわけで、アンテナや受信方式を変更せずに出力だけを上げてもエリアは全然広がらないと言うことです。逆に、アダプティブアレイ技術のように、出力を変えずに受信方式を変えることによって劇的にエリアを広げることのできる技術もあります。移動電話システムとしてこの技術を実用化しているのは世界でもDポぐらいです。

◇で、この基地局からの電波と端末からの電波が不均衡、というのにはもう一つ意味があります。特に、一般的な携帯電話では、下り(基地局→端末)と上り(端末→基地局)の周波数が違います。電波の周波数が違うと、電波の通り方が違ってきます。つまり、下りで伝わる電波と上りで伝わる電波は違う経路を通っている可能性があるわけです。こうなると、下りの電波が通るから、と、そこをエリアにしてしまうわけには行きません。ちょっと話がそれますが、携帯は一般的に1基地局から複数の周波数の電波を出していますので、その意味でもエリアというのはかなりあやふやです。一方、PHSは、上りも下りも同じ周波数を使っています。ですから、上りも下りも同じように同じ経路を通って伝わります。この点で、PHSはエリア設計がしやすく、エリアマップの信頼性も高いといえます。またまた話はそれますが、DDIポケットは、この上り下り周波数が同じという特徴を使って、「送信ダイバーシチ」という高度な技術を実用化しています。これは、エリア内の「穴」を大幅に減らす効果があります。建物の陰とかで切れちゃう、あの現象がほかのPHSに比べて圧倒的に少ないのはこの技術のおかげなんです。携帯業界では次世代携帯でようやく導入されようか、というくらいの技術なんですが、Dポは95年に基地局設置を始めた頃からすでにこの技術を実用化してしまっていたんですよ。すごいですね。

◇とまあ、こう言うわけで、たとえ全国津々浦々で電界強度測定をして電界強度マップを作っても、それが即エリアマップとして使えるか、というとそういうわけではないんですね。その地点から端末の電波を発して、基地局でどの程度の強度でキャッチできるか、これもまた重要なんですよ、というわけです。

◇つまり、エリアマップというのは、あまり頭から信用するのではなく、もし心配ならきちんと借り受けて試用してみた方がいいということなんですよ。使ってみると意外とエリアだった、なんてこともしばしばあるので、得した気分になることも。逆に、エリア内なのにだめなこともあるわけで、特に、ドコモPHSを使う方、ご用心。64kエリア、塗りつぶしてある中で絶対64kでつながるわけではないです。むしろ、「64kじゃつながらないからいつも強制的に32kで繋いでる」なんていうかわいそうな人が結構いるらしく、こればっかりは、使う前に試用が必須です。

◇ということで、まとめると、エリアマップはPHS>携帯、都市部>田舎で信頼度が高いと言うことなんですね。ただ、信頼度が低い=ダメというわけではないので注意。信頼度が低い、ということは、エリアがマップのものより広くなっちゃっている場合もあるからです。とはいえ、実は、エリアについて安心確実なのはエリアマップ通りにサービスが受けられるPHSなんですよ、って言いたいわけですが・・・なんか今回はちょっと無理がありましたねぇ(笑)。まあ、私の実経験を言わせていただければ、エリアに関しては結構把握しているつもりなので、思わぬところで圏外を食らっていやな思いをした、ということはほとんどないですけどね。




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