「エリア」とはなんぞや?~決めるのは誰?(前編)


◇ケータイが電波を使っているということは・・・もちろんみなさんご存じの通り。これに反論されたらとりあえず今回のコラムは終わりなので、これだけは反論しないでください(笑)。で、電波というのは、もちろん電磁波の一種、つまり、可視光やX線などと同じように電界と磁界がお互いに励起しあいながら空間そのものを媒体にして伝わっていくものです。ですから、基本的には懐中電灯の光と同じような性質を持ちます。すなわち、障害がなければたとえ宇宙の果てまでも伝わるのです。なのに、ケータイはエリア外だと「電波が届きません」と言われて使えなくなってしまいますね。これはいったいなぜ?というのを今回はネタにしちゃう訳です。

◇先ほども言ったとおり、電波は確かに障害物さえなければどこまででも伝わることができます。外惑星の探査に行っちゃったパイオニアとかボイジャーとか、あんな遠くから電波に乗せてきれいな画像を送ってくれますよね。そういえば、ボイジャーは先日(注:このコラムの元プロットは4月に書いています)、地球からの電波による指令で内部回路を新調(正しくは冗長回路側に切り替え)したらしいですね。そう、電波というのは、本気(?)になればどこまででも届くんです。しかし、なぜにケータイの電波はとぎれてしまうか。まず素人考えで浮かぶのは、「そりゃ、地上は障害物もあるし、空気だって立派な障害物でしょ?それにボイジャーとかの電波とかと比べちゃ恥ずかしいほどケータイの電波は弱いし」。とりあえず、これは正論ですよね。

◇とはいえ、全く障害物のない海上でもいつか電波はとぎれます。それに、空気による電波の吸収だって、たかがしれています。とまあ、こんなことをだらだらと書いているといい加減にツッコミを受けそうなので、まじめにお話ししましょうね。電波は基本的に(あくまで基本的に、ですよ)全方向に広がっていきます。ですから、進めば進むほどどんどん広がって、密度(語弊あり)が薄くなっていきます。水面に石をぽちゃんと投げ込むと波ができますが、広がっていくとだんだん波高が小さくなっていきますよね。電波の場合は、アレが3次元的に起こっているわけです。ですから、電波の発信源から遠くなると急速に電界強度は弱くなっていきます。これが遠くなると電波が届かなくなるメカニズムの正体です。

◇さて、これで納得してくれる方がおそらくここの読者の9割以上を占めていることでしょう。ところが、私はちょっと意地悪な質問をしてみます。「いくら弱くなったって、電波があることには変わりがないじゃん。てことは、やっぱりどこまで行ってもちゃんと電波は届いているでしょ?『電波が届きません』なんてウソじゃん!!」

◇さて、早くも種明かし(笑)。これについてはコラム十一号「切れる?切れない?瀬戸際の攻防」でもちょこっと話が出ましたね。そう、いわゆる環境雑音という、様々な理由でこの世に満ち満ちている「ゴミ電波」に比べてその電波が弱くなってしまうと、ゴミの中に埋もれて聞こえなくなっちゃう訳です。混雑した駅のホームやパチンコ屋の中では隣の人の声が聞こえにくくなっちゃうのと同じです。で、話はそれますが、この環境雑音ですが、これは「誰かがだらしなく電波をばらまいているのが原因なら、取り締まっちゃえばケータイのエリアは広がるよね」とか言われると困るんですよ。実はこの環境雑音、ほとんどが宇宙由来。よく、太陽表面でフレア爆発が起こって通信に影響が出た、なんて話を聞きますよね。ふう、閑話休題。

◇さて、前置きが長くなりました(前置きだったの!?)。こういう理由で、ケータイの電波、ある程度以下まで弱くなったらわざと「こりゃもうだめだ」と捨てちゃって、使わないことにしています。これを誰が決めているのか、というと、大概はその通信方式の規格です。ですから、エリアを決める一番大元のよりどころは「通信規格」ということができます。

◇この通信規格が、「エリアの端」を規定する電力なり電界強度なりを決めるときには結局何が重要となるのか、と言うことなんですが、たとえば、「完全に環境雑音以下になったら」という決め方だと、これはちょっとあんまりです。環境雑音というのは常に変動していますし、通信に使っている電波ももちろん様々な理由で変動しています。そういうわけで、環境雑音が瞬間的に大きくなったり、通信波が一時的に弱ったりするたびにリンクがぶっつりと切れてしまうわけで、規格がこのギリギリまでを許容していたとすると、エリア端近くでははっきり言って使い物にならないダメダメ電話となってしまいます。

◇と言うことで、実際にこのエリアの端をどのように決めるのか、これが、実際の通信にどの程度、環境雑音や通信波減衰によるエラーが乗ってくるのか、を基準にしたりします。このエラーの割合を出す基準として、ビットエラーレートとか、フレームエラーレートとかブロックエラーレートとかの様々なエラーの算定方法がありますが、どれを採るにしても、エラーレートが一定の割合を超えるような電力レベルを、エリア端電力として規定してあるようです。ちなみに、普通はフレームエラーレートよりビットエラーレートの数字の方が遙かにシビアな制限を課されます。それは、ビットエラーが一つでも起こると、それが数百ビット集まったフレームそのものを破棄しなければならなくなるからです(エラー訂正が無い場合)。

◇で、まとめると、電波は基本的にはどこまでも届くけれども、それが環境雑音以下になると検出不可能になり、その時点で物理的にエリアとすることは不可能となります。一方、実際に通信に起こるエラー率を考えた場合、環境雑音のレベルまで弱ってしまった通信波はとてもじゃないですが使えないので、規格ではエラーレートを元にエリア端の電力をある値に決めてしまっている、というわけです。

◇と言うことで、今回はエリアがどのように決められているのかを見ていこう、と思ったのですが、実はここまででまだ半分(笑)。ちょっと長くなりすぎてしまったので本コラム初の前後編となってしまいますが、次回をお楽しみに!


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