京セラ「ビジュアルフォン」について考えてみる


◇さて、今回のお話は、当時一世を風靡(?)した世界初のモバイルTV電話「ビジュアルフォンVP-210」について、ということなんですが、さてどんな展開になることやら。

◇さて、この世界初のTV電話ビジュアルフォンが発売されたのが1999年8月といいますから、ざっと2年半ほど前(2002年2月現在)になります。もっとわかりやすい指標をあげると、H”がリリースされた翌月。しかし、おそらく開発期間が長くかかりすぎたせいだと思うのですが、残念ながらH”ではなく、敢えて分類すればPDX(α-DATA32)機になります。せっかくなら64kbpsでテレビ電話を実現できていればよかったのになあ~と思いますが、それが出来なかったのには実は訳があります。H”に採用された64kbps通信方式は、PIAFS2.1でした。これは、着信には未対応の規格でした。64kbpsでテレビ電話となると、どうしても64kbpsでの着信が不可欠になります。結局、着信対応のPIAFS2.2が実用化されるには、2001年5月のCFE-01の登場を待たねばなりませんでした。こう言う理由からも、32kbpsでがんばってTV電話を実現したものと思われます。

◇で、そのテレビ電話の方式をざっと見てみることにします。画像伝送方式はmotion-jpeg。jpegコマ画像をがりがり送って、がりがりデコードして上書き表示するだけ、という、割とシンプルな動画方式です。もちろん当時は安価なmpeg4チップなどありませんでしたから、ある意味唯一の選択肢であったかも知れません。また、これとは別に音声も伝送しています。実際に使ってみたところ(なにー!?)、声にはやや遅延があり、普通のPHS音声に比べるとかなりくぐもった感じ(携帯に近い感じ)がします。おそらく従来のコーデックである32kADPCMと親和性のある16kADPCMを使っているものと考えられます。つまり、動画16k+音声16kによる音声通話です。画像は確かにコマ数も少なく遅延も気になりますが、その分音声に帯域をふんだんに使っているため、音声品質は携帯電話よりは上です。

◇次に端末をもう少し見てみましょう。端末は、最近のケータイに比べるとかなり大きいです。一般的なストレートタイプの携帯電話の容積を二倍にした感じでしょうか?重さも約160グラムで、ちょうど倍くらいです。ポケットに入れて歩くには少し大きすぎる感じがします。また、ディスプレイも当時としては驚異的な大きさとなる2インチ。モノクロでは文字電話やFreeShot、DataScopeなど同程度の大きさのものもありましたが、受話器型端末でのカラー液晶としては最大級だったでしょう。しかもTFT液晶。いまや当たり前になりつつありますが、当時はもちろん業界初です。かなりきれいな画像を表示することが可能です。また、当時の京セラ機から見ると2世代前になる端末とほぼ同じ形のサイドキーがついていました。開発にかかった時間がどのくらいだったか、ここから伺えます。内蔵デジカメは11万画素、約220*224のフルカラー撮影が出来ます。スナップ機能もあり、本体内に20枚、jpeg方式で写真を記録しておくことが出来ます。

◇もう少し詳しく見てみましょう。実際に操作してみると気づくことが、なんだかえらくちぐはぐだなあ、ということです。たとえば、写真撮影のとき、これがまた、えらく画面のレスポンスがいいんです。これだけで見ればFOMAビジュアルホンよりいいほど。しかも撮影サイズはFOMAより上なので、絶対何かインチキをしています。おそらくハードウェアjpegコーデックチップなんぞを使っているのでしょう。なぜかというと、その画像の表示以外のレスポンスの悪いことといったら。しかも、メニューは一応グラフィカルアイコンですが、実質モノクロで見にくいし、機能メニューは一覧性ゼロ。機能ボタンを押す毎に次の機能メニューが現れる、という、前PDX機とまったく同じ仕様なのです。ですから、最近の端末を使い慣れている人にとっては、「何だ、これ、すごそうでだめじゃん」という妙なちぐはぐ感を感じてしまいそうです。また、使っている用語もかなり古臭い感じ。古臭い、というより、当時ケータイ業界にそもそも相当する言葉がなかったことが原因なんですが、写真のことを「スナップ」、壁紙のことを「レーベル」、などなど、怪しげな横文字で煙に巻こう(笑)という雰囲気が溢れ出しています。確かに当時はケータイとカメラとは、なんとも意味不明な組み合わせではあったわけですが。

◇ということで、確かに電話としては十分使える端末ですが、最近のケータイのように半PDA的使い方が出来ることを期待してしまうと、えらく使いにくいです。一応コンテンツサービスにも対応していますが、操作がしづらいことは必至で、もちろんビジュアルフォン向け壁紙を置いているサイトなどまったくないでしょうから、アミューズメントとして使える端末ではないようです。

◇このビジュアルフォン、一度テレビで特集を組まれていたのを見たことがあります。いや、「世界初、ビジュアルフォン!」てな特集ではなくて、です。それは、「お見合い仲介会社紹介」。あるお見合い会社なんですが、その会社では会員にこのビジュアルフォンを標準配布します。そして、お見合い会社はお見合いをするお互いの電話番号を通知し、お見合い希望者は相手にビジュアルフォン電話をかけて、なんと電話でお見合いをしてしまうというシステム。うーむ、いくら情報化社会だからといって、ビジュアルフォンでお見合いをするのはどうかなあ・・・と思ってしまうわけですが、その会社、今はどうなったんでしょうね。最近まったく噂を聞かないところを見ると、潰れたのかもしれません。最近ビジュアルフォンの在庫もだぶついているようですし。意外とFOMA2101Vを配布して同じことを続けていたりして。6倍の料金で(笑)。

◇というわけで、あまりに先を行き過ぎたために大いにこけちゃった感のあるビジュアルフォン。リリースが後2年遅かったら(笑)、もっと大ヒットになっていたに違いないのですが・・・残念なことです。京セラさん、64kbps対応ビジュアルフォン2、出してみませんか?今出してもFOMAの後追いと思われちゃうかもしれないですが。




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