ドコモPHSをお考えのあなたに


◇PHSはすばらしい!PHSがあればなんでも出来る!PHSを見捨てた携帯ユーザたちは見る目がない!・・・などなど、私はとかくPHSに対する思い入れがあります。が、皆さんもお気づきのように、なぜかドコモPHSだけは余り取り上げて説明することがありません。ということで、せっかくの機会なの、今回はドコモPHSで行ってみましょう。

◇ドコモPHSといえば、ご存知ギャランティ方式。Guaranteeは、日本語で「保証」を意味します。つまり、「通信速度保証型」というわけです。それに対してDDIポケットの提供する64k通信方式は「ベストエフォート」、Best Effort、つまり、最大効率型です。さて、このギャランティ方式、どういう方式かというと、簡単に言えば、一度つなぐと切断まで通信速度が変化することがない、というもの。つまり、速度が保証されているわけですね。この方式の優れている点は、64kで接続すれば、切断するまで64kの速度が確実に出るということ。また、ゆえあって(後述)32kでつないだときも、32kでつながっていることが保証されること。つまり、今自分がどの速度で接続しているのかが確実に分かるのです。

◇一方のベストエフォートは通信中に32kと64kの間で通信速度が変化する可能性があります。そのため、今、自分がどの速度で接続されているのか分からず、ちょっと不安(笑)な気分になることもしばしば。

◇さてこうやって見比べてみると、わざわざ無駄な制御をする上知らぬ間に32kに落ちてしまうようなベストエフォートより64kが常に保証されるギャランティ方式のほうが断然いいではないか、とだれしも思うことかと思います。が、ちょっと待って。確かに、ギャランティは有効な方式です、「全ての基地局が64kに対応しているなら」。そうでない場合は、かなり痛い目に遭います。さてお立ち会い。

◇ドコモPHS網は、当初は小型の電柱ぶら下がりタイプ、または公衆電話ボックス設置タイプを中心に展開されました。これらの基地局は、当時まだ開発されていなかった64k通信にはもちろん非対応でした。ところが1999年、PHS64k通信の規格PIAFS2.0が作られ、ドコモPHSはこの方式を採用して64k通信をいち早く取りいれました。と同時に、64k通信対応の基地局も設置を開始しました。一方のDDIポケット。こちらは64kPIAFSの第2弾、PIAFS2.1の制定を待って64k通信サービスを開始。DDIポケットが敢えて後発の方式を採用したのには、一つの勝算があったからでした。それは、インテリジェント化された基地局の存在でした。DDIポケットの基地局はほとんどがインテリジェント化されていて、ネットワークからのアップデートで新しい通信方式に対応できるように作られていました。そのため、約半年の遅れを一瞬で挽回し、全国のDDIポケットサービスエリアでいっせいに64k通信が利用できるようになりました。

◇そういうわけで、いまだにドコモPHSでは64k未対応の地域が全国に広がっているのに対して、DDIポケットは64k未対応エリアは事実上ゼロです。さて、こうなるとドコモPHSの採用したギャランティ方式はいろいろな問題を含み始めます。

◇では、よくあげられる簡単な例を見てみましょう。
その1 64k対応エリアから未対応エリアへ移動した場合
ドコモP:切断されます。
DDIP:そもそも有り得ません。
その2 あるCSカバーエリア内で、すでに誰かが64k通信を利用していた場合
ドコモP:32kで繋がり、切断するまでそのまま。どうしても64kを使いたければ、もう一人が通信を止めるまでリダイヤルを繰り返すことに。
DDIP:32kで繋がりますが、もう一人の利用者が通信を止めると同時に64kにアップ。
その3 64k通信中移動先に空きスロットが足りない場合
ドコモP:切断。
DDIP:32kに落ちます。
その4 32kで通信中、移動先に2スロットの空きがあった場合
ドコモP:何も変化ありません。
DDIP:64kにアップします。

◇さて、これだけを見ても、どうもベストエフォートのほうが優れているように見えませんか?・・・はい、聞こえてますよ、「64k対応エリア内で移動せずに通信しているならさほど違いはないし、むしろ最初に64kで繋がることが確認できるギャランティのほうがいいじゃん!」というあなたの声。ごもっとも。では、次にその64k対応エリアというやつを検証。

◇64k対応エリアというのは、正しい呼び方ではありません、実は。エリア、というと、「○○市△△町xx2丁目はエリア」という言い方が出来てしまいますが、64k対応なのはエリア(面)ではなく、基地局(点)なのです。その基地局から電波が届く範囲が64k対応エリア、となるわけですが、そのエリア内でも、もっと近い位置に64k未対応基地局が存在すれば、その場所(点)は「64k未対応」なのです。この辺は勘違いが多いところ。ですから、ドコモPHSのエリアマップを見ると「64k対応エリア」とべったりと塗りつぶした図になっていますが、あの塗りつぶされた中にも64kで繋がらない(つなぎにくい)エリアがわんさと隠れています。ドコモPHSのHPのFAQをよく見てみましょう。「64k対応エリア内でも未対応基地局があるため64k通信が利用できない場合があります」と明記されています。

◇さて、ここで問題。もしあなたがそんな微妙な場所にいて、どうしても32kでしか繋がらなかったら。どうします?答えは「1.あきらめる」「2.DDIポケットに変える」しかありません。だって、ギャランティが性能を発揮できるのは移動していないときだけ。64kが使える地点まで移動するなら、その間はもちろん通信は出来ないということです。それに、どこでもすぐに使える、というのがモバイルの利点であり、存在価値であるはず。繋げないからとわざわざ移動するというのは本末転倒でしょう。もちろん、同じ部屋の中で32kしか繋がらない場所と64kで繋がる場所が混在する可能性もありますが、これだって、ちょっとずつ位置を変えながら64k接続を何度もトライしてみるというのは、実に面倒な話。ドコモPHSを使う上での最大の落とし穴はここなんですね。

◇ただし、一つ利点があります。それは「通信料金」。64kで繋ぎたいとき、32kでしか繋がらなければ料金は発生しませんし、同じデータ量のものを最大速度でダウンロードするなら短い時間ですむ(=安く済む)というわけです。ただし、これには条件があります。それは、「絶対に移動しないで使うこと」。もし移動して通信が切断してしまえば、かえって通信料金も通信時間もかかってしまいます。さて、こんな用途にちょうど合った使い方が、実は音楽配信。例の、CD並みの音質の音楽をダウンロードできるサービスです。これなら、別に移動しながら使う必要はありませんし、ダウンロードサイズも決まっています。

◇では、実際に音楽配信の通信料を比べてみましょう。DDIPは1分13円、ドコモPは1分15円の課金になります。5分の曲をダウンロードすると、64kbpsなら約10分。お値段はDDIPが130円、ドコモPなら150円、その差は20円。その差が逆転するには、DDIPが2分余計に時間がかかると計算しなければなりません。すると、DDIPは総計12分で、そのうち4分が32kbpsで繋がっているということになります。全ダウンロード時間の3分の1が混雑により32kbpsしか出ない、と考えるのはちょっと無理があります。と言うのも、ひとたび64kbpsにアップすれば、(移動しない限り)決してその接続を手放すということはないからです。で、実はこの計算、ダウンロードサイズが大きくなってもまったく同じ(ダウンロード時間全体の3分の1が32kbpsで繋がるという条件)ですから、結果から言うと、かかる料金は最低同程度、ほとんどの場合はDDIPの音楽配信のほうが安くなるという計算になります。

◇さて、料金の話をデータ通信全体に広げてみます。ドコモPHSも、距離によって変わるおなじみの課金体制を持っています。モバイルとして利用することの多い平日昼間をざっと比べてみると・・・
(10円で利用できる時間)
同一区域内:ドコモP=60、DDIP=70
~20km:ドコモP=60、DDIP=60
~30:ドコモP=45、DDIP=60
~60:ドコモP=36、DDIP=45
~100:ドコモP=14、DDIP=36
~160:ドコモP=14、DDIP=25
160超:ドコモP=14、DDIP=20
どの距離帯でもDDIPより高額です。ここではあげていませんが、唯一、深夜(23時以降)同一区域内がドコモP=90で、安くなっています。しかし、そんな時間にわざわざモバイルを利用するのもナンセンス。料金面では完全にDDIPに水をあけられた形です。

◇さて、このほかにもいろいろと比較する点はありますが、一言で言ってしまうと、「ドコモPHSはDDIPやアステルに比べて使えない!」。DDIPのように高品質でもなければ、アステルのように格安でもないドコモPHSは、今やもっとも使えないキャリアになっています。確かに、エリアは広がりました。それは、DDIPの真似をして高出力基地局を設置し始めたから。おかげで、低出力基地局と複雑に混在することになり、移動中の不安定性を生んでいます。確かに、64kbpsサービスを始めました。しかし、公称エリア確保のためか、未だ32kbps基地局が存在してせっかくの64kを使い物にならなくしています。既存32k基地局を有効利用したアステルのデュープレックス方式64kのほうがまだマシです。

◇はっきり言うと、ドコモPHSは、サービス展開ポリシーがないのです。何をやっても中途半端、安くしたいのか、高機能化したいのか、わからないのです。そして、今はただただ、ドコモ携帯との連携(ファミリー割引)だけでユーザを引き止めているような状態です。こんな状況ですから、当然利益も出ません。2000年度決算は、約1000億円の赤字。DDIPが約100億円の赤字だったことを考えると、ものすごい金額です。こうやって携帯などの収入をひたすら食いつぶすだけのPHSを、なぜドコモは続けるのでしょうか?

◇それは、ドコモというキャリアのブランドアップのためでしょう。一例を挙げれば、先ほどの音楽配信。「なぜDDIポケットにあるのに、天下のドコモは出来ないのか?」と言われ続ければ、結局、ドコモ(=PDC方式携帯電話)はPHSより劣っていたと認めざるを得ません。ところが、ここでPHSを持ってきて、形だけでも音楽配信を始めれば、みんなドコモを認め、それはドコモへの信頼となり、PDC携帯電話への信頼となるわけです。ドコモ=エリア広い&音楽配信も出来る、DDIP=音楽配信できるだけ、と言うように比べれば、どちらが優れている(ように見える)か、歴然ですね。そうです、ドコモは莫大な資金を浪費してPHS陣営を牽制するためだけに今や自前のPHSを利用しているのです。その典型的な事件は2001年秋にも起きました。準定額サービスへの参入です。明らかに無理があります。システムそのものを変更してコストを下げ、(準)定額サービスを始めたDDIP、アステルに対し、ドコモPHSの準定額サービスはシステムには手を加えていないため、有無を言わさず赤字です。あるとすれば、事務処理上のコストダウン効果でしょうが、それでも現在の価格の3分の1は明らかに不自然です。ドコモPHSが単独の会社であったとしたら成り立たないサービスなのです。

◇とはいえ、ユーザにとっては安くサービスを受けられるのは喜ばしいこと。従来からのドコモPHS利用者には朗報かもしれません。ただし、これを機にドコモPHS導入を、と考えた方、ちょっと考えてみたほうがいいかもしれません。このサービスは単なる割引サービスであり、PHSが進化したわけではありません。もしドコモがこのサービスでDDIPに勝ったとしましょう。DDIPは解散し、DDIのPHSがほとんど姿を消してしまうとしましょう。どうなるでしょう?答えは簡単です。ドコモもPHS事業をたたむ可能性が高くなります。DDIPが潰れてしまえば携帯電話に対する競合システムはなくなるわけですから、ただの金食い虫のPHS事業は不要なわけです。そうなるとPHSの灯は完全に消えてしまいます。

◇ドコモPHSは基本的に進化することを放棄しています。ドコモPHS最新機種633SとDDIポケット最新機種KX-HV200を見比べてみてください。633Sに一年前は不可能だった機能が一つでも入っていますか?一方、KX-HV200には、パケット通信AirH”、UUS機能を使ったEメール、ベストエフォート64k着信対応のPIAFS2.2など一年前には不可能だったいろいろな機能に対応しています。この違い、わかりますか?ドコモPHSを選ぶということは、安くて便利な通信回線「PHS」の将来を否定するようなものなのです。べつにいいじゃん、次世代も始まるんでしょ?、と言う方、だったらドコモPHSではなく次世代携帯を選んでください。私は次世代携帯の通信料金が払えるほどお金持ちじゃないので、これは大変困ります。

◇というわけで、そんなに安いわけでもなし、そんなに便利なわけでもなし、ただ携帯電話と組み合わせて使うとちょっとお得かな、と言うのがドコモPHS。元々ドコモ携帯を持っているなら安いデータ回線としてお勧め(実質、携帯+数百円のレベルで新たにPHSを持てる)ですが、単体として持つのはいまいちお勧め出来ません。いや、少なくとも私は、この世にドコモPとアステルしかなければ迷わずアステルを使わせていただきます(笑)。



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