切れる?切れない?瀬戸際の攻防


◇私もPHSなるものを持ち始めてからすでに5年にもなろうという人間なもので、電波の瀬戸際との戦いには結構なれたものです。ということで今回は携帯電話の宿命、電波の切れ際についてのお話。

◇PHSに限らず、各種携帯電話と言うものは、電波を利用しているわけですから、当然その電波の届かない場所に行く可能性が十分あります。また、一つの基地局からの電波はどうしても限られているため、移動中にはある基地局からの電波がとぎれてしまう、という事態に必ず遭遇します。通信がとぎれるのは、得てしてそういうときが多いわけですが、それだけが原因か、といわれると、どうやらそれだけではないようです。ということで、その話も今回少ししましょう。

◇とりあえず、通信が切れると言えば、大概は電波が切れることを指します。金(電波)の切れ目が縁(通信)の切れ目というわけです。そこにはヒジョーに複雑でわかりにくい理論があるのですが、ぶっちゃけて言うと、電波に乗った信号よりも環境から放出されるノイズの方が大きくなったとき、このときが縁の切れ目というわけです。ですから、理論的に言えば、環境雑音を完全にゼロにすればどんな遠距離からも通信は持続できる・・・ということなんですが、実際は、ある程度より電波が弱ったら、自主的に切断する、というような処理を行うのが普通のようです。さて、その「自主的」ですが、誰にとっての自主的か、が、また問題です。選択肢は二つ、基地局か端末か、です。どちらが多いかというと、基地局側の方がおそらく圧倒的に多いでしょう。なぜなら、基地局は端末を遙かにしのぐ出力で送信していますが、端末はそうではありません。必然的に、基地局からの信号は端末に届くが、基地局自身は端末からの信号を認識できない、という状況が起こりやすくなります。さて、そのとき、いったいどうするのでしょうか?

◇簡単な解決法として、基地局は、端末の電波が弱くなったら、「基地局切り替えた方がいいよー、こっちにもっといいのがあるからねー」と教えてあげることです。この方法の利点は、切り替えるときにあらかじめ条件のいい基地局をネットワーク側で選んであるため、通話の瞬断が短くて済むというものです。これは、現在の日本の携帯電話方式の主流であるPDCで採用されています。しかし、この方法には欠点があります。基地局は、端末がどの程度受信できているか把握していないため、とんでもない基地局切り替え(ハンドオーバ)命令を出すことがあり得るのです。その結果、基地局を切り替えてみたはいいが、結局電波が通らず切断、ということが多々あります。PDCでの通話が不安定なのはこれが原因です。また、端末が電波を測定して、危なくなったら「基地局そろそろ切り替えたいよー」と基地局に訴え、「じゃあ、こっちにしなよー」と返す、というハンドオーバモードもあります。しかし、これにしても、かなり電波が悪くなってからやったのでは「じゃあこっちにしなよー」信号が通らない場合もあり、結局切れてしまいます。

◇実は、ハンドオーバにはもう一つやり方があります。完全に端末主導でやるやり方です。これは、端末が「あー、電波が悪くなってきたなー、よし、じゃあいっちょもう少しいいのを探してみるか」と、いきなり始めるタイプです。このタイプのハンドオーバには条件があります。それは、端末と基地局がほぼ同じ条件で電波を受信できること、ということです。どういうことかというと、端末が「あ、だめだなー」と思う頃に基地局側では全く電波が届いていない、なんて言うことになると完全に切れてしまうからです。で、これは、実はPHSでしか使えません。PDCは端末→基地局(のぼり)と基地局→端末(下り)で違う周波数を使っているため、電波の通り具合が微妙に違い、さらに、基地局一つあたりのカバーエリアが馬鹿広いため、端末の電波が通らなくなることの方が圧倒的に多くなります。しかし、PHSは上り下りとも同じ周波数で、1基地局あたりのカバーエリアも狭いため同じ条件で通信できるのです。で、このやり方、どうやるかというと、まず端末は電波が弱くなったことを関知します。そして「弱くなったみたいだから切るねー」と現在の基地局に通知し、それから次の基地局を探し始めます。次のが見つかったら「今からそっちに繋ぐけど、いいー?」と聞いて、OKなら通話再開です。この方法の利点は、すべて自力でハンドオーバを行うのでエリア内でさえあればほとんど切れることはないと言うことです。しかし、これにも欠点はあり、それは、一度通話を切ってから基地局を検索し、再接続、という手順を踏むため、瞬断時間が非常に長くなると言うことです。昔のPHSの「切れやすい」という評判の一部は、ここから生まれているものと考えられます。

◇と、ここで、H”が登場します。これは、無線機を2台内蔵し、一台の無線機で通話中にもう一台で基地局検索を継続的に行うというものです。すると、電波状況が悪くなったときに、すぐに(通話を切ることなく)新しい基地局への接続を始めることができます。そのため、瞬断時間が大幅に減りました(好条件では人間の知覚以下です)。

◇そういうわけで、欠点を残したままのPDCと、世間の評判を払拭するために欠点を克服したPHS、今どちらが切れやすいかというと、圧倒的にPDCです。これは、実感しています。町中を時速50km程度で移動中の車内から通話中のPDCはあっさり切れます。本当に切れます。実家に帰ったとき後部座席に乗った母(ドコモユーザ)が電話中、あっさり切れました。それに対して、H”はかなり切れません。東名高速を移動中、助手席に座った友人が実家に電話しましたが、最後まで切れませんでした。これについては、後でもっとびっくりな例を紹介します。

◇さて、通信が切れる理由のもう一つとしてあげられるのが、ネットワーク側からの切断です。回線の混雑などの理由で、ネットワーク側から突然切断されたりするもので、切れたところでなぜ切れたのか理解できなくて苦しむ(笑)ところです。今のところ、PHS(普通の)でこれをやられたことはありませんが、これをやられている(かもしれない)携帯ユーザは数多く目撃しました。それだけ携帯ユーザは多いと言うことなんですが・・・。これをなるべく減らすべく次世代携帯電話というものが始まったわけですが、今後どうなることやら・・・。

◇さて、さっき、「PHS(普通の)ではやられたことは・・・」と書きましたが、普通でないPHSではやられた(かもしれない)ことはあります。AirH”です。パケットを使った常時接続サービスですが、サービス開業当日、予想を遙かに超える利用者が単一のアクセスポイントに殺到したためか、30分以上接続を維持することが困難でした。家でじっとしているだけなのに・・・。なので、おそらく上流側で強制的に切断したのだろうと思います。特に、通常の通話に影響を与えてはいけないので、そういうオペレーションをやむなくやった可能性はあります。

◇しかしまあ、このAirH”、おかしな特性を見てしまいました。移動せずに繋いでいると切れることがあるのですが、移動しながらだとなぜか切れないのです。以下はびっくりするような、嘘のようなほんとの話。

◇その日、私は普段の居住地(神奈川県某市)から、友人宅(茨城県つくば市)まで、行くことになりました。当日は、その友人に神奈川まで(車で)迎えにきてもらい、それに同乗してつくばまで行くことになりました。で、AirH”によるつなぎ放題サービスが始まったばかりの当時、とにかくつなぎまくりたくて、HPCを持って車に乗り込み、接続。そして、出発です。神奈川県内は順調、東名高速に乗っても速度は落ちましたが接続は切れません。その後、保土ヶ谷バイパスを通り、横浜新道にのり・・・と、ここで間違って一般道に降りてしまいます。一般道では快適そのもの。それから、何とか道をたどって、湾岸線にのります。ここで、最大の難関が待ちかまえます。湾岸道路には一度東京湾に潜るトンネルがあるのです。ここでは絶対電波は届きません。で、AirH”のインジケータは「潜行モード」(勝手に命名)に入ったことを示すオレンジに変わります。しかし、トンネルを出るとすぐに通信再開。それから、ずーっと湾岸線を行き、環状2号を行き、6号下りを行き、常磐自動車道へ。ここも大難関、なんと言っても、基地局密度が低い!ですが、何度か潜行モードに入りながら問題なくつくばまで接続を維持してしまいました。友人の部屋に入るまで・・・。総移動距離150km以上、移動時間2時間強の間、ついにつながり続けてしまったわけです。恐ろしいほどの安定性といわざるを得ません。このように、端末主導のハンドオーバはある程度の時間的マージンさえ確保すれば、まずハンドオーバに失敗すると言うことはないのです。

◇で、ちょっと話はそれますが、その日もつなぎ放題プロバイダの混雑は続いていました。でも、なぜか2時間以上も接続を維持できたのです。どういうことでしょう?これは、どうも、基地局を時々刻々と移動していると、一つの基地局からながーく通信しているようには見えないため、混雑による切断対象になっていないからではないか、と言うように見えます。はっきりしたことは言えませんが・・・。ということで、混雑してなかなかつながらないときは移動しましょう(って、当たり前か・・・)。


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